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カフエ12ケ月

打ち合わせの回を重ねて行く内、最もこだわった「テーブルに座る椅子から窓を通して何が見えるか」,「建物をもっと林の奥へ、もっと・・・。」。(なぜそこまで・・・。)

私とは何か打ち解けない空気が残ったまま建物は完成して行きました。完成が近付いた頃、Eさんからお店の名前を何かはにかむ様に、小さな声で「カフエ12ケ月」と初めて聞きました。開店前には職人さん達も交え、心のこもったお料理を振舞つて頂いた事を思い出します。

亡くなられた翌年、仕事も兼ねて関東にあるEさんの実家に立ち寄り、お線香をあげさせていただきました。

小さな仏壇に飾られた遺影のEさんの表情は家族での北海道旅行での1枚とのことで、とても清々しい笑顔が印象的でした。なぜEさんはあれほど森の中にまで入り、自らそこへ住み、店を持つまでに至ったのだろうか。Eさんは私の出会った依頼主のなかでは、ある面において特出した感性と強い精神の持ち主で、その後の私の仕事に少なからず影響を与えていただいた方の中の1人です。               Eさんの生まれて育った家も含め、周りの環境も私の目で確かめて見たかつたのです。そこは私の予想を裏切り、実家周辺だけは蜂の巣の様に住宅が密集したところからいくらも離れていないのに忽然と小さな「田舎」に包まれていたのです。Eさんは清々しい風が流れる、私なども忘れていた本当の「田舎」を探しに来た1人の様な気がしました。

桂の厚い板に彫りこまれた「カフエ12ケ月」の看板は遺影の隣に静かに立てかけられていました。



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